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政府の進めようとしているDX政策

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現在、日本の最大の話題はDX(デジタル・トランスメーション)です。

コロナ禍を経験して、日本のデジタル化・IT化は
大変遅れていることが、明白になりました。

数年前なら日本のIT化が遅れていると言っても、
一般の人はそんなことはあり得ないと
真面目に取り合ってもらえなかったでしょう。

しかし、現在の日本のデジタル化は、欧米は言うに及ばず、
中国、韓国、台湾などにも遅れをとっています。

日本の生産性が低位に留まっている最大の理由の一つが、
デジタル化の遅れであることが明らかになったことで、
日本の生産性改革の切り札としてデジタル化が大きく取り上げられるようになりました。

 

ここでは、政府のDXを進める方針を示した「DXレポート」を再確認し、
政府がDXをどのように進めようとしているのかを見てみたいと思います。

 

DXに関する政府の方針が初めて示されたのは、2018年9月です。

以来、2020年12月に2.0、2021年8月に2.1がまとめられています。

それぞれのDXレポートを概観する前に、
まずDXとは何か?DXの定義について見てみたいと思います。

ここではDX一般の定義というよりも、
政府がDXをどのように捉えているかの観点で解説します。

「DXレポート」では、IT専門調査会社のIDC JapanのDXの定義を引用する形で、
DXの定義を示しています。

 

“企業が外部エコシステム(顧客、市場)の破壊的な変化に対応しつつ、
内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、
第3のプラットフォーム
(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)を利用して、
新しい製品やサービス、新しいビジネス・モデルを通して、
ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、
競争上の優位性を確立すること”

 

全般にDXの全体像をよく表しており、採用したものと思われます。

一方、「DXレポート2」で示されたDX推進システムガイドラインのDXの定義では、

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、
顧客 や社会 のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、
業務 そのもの や、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」

DXレポートの定義よりもやや簡略化されています。

 

いずれにせよ、DXのポイントは、以下の4点にまとめられると考えられられます。

1.データとデジタル技術の活用
2.製品やサービス、ビジネスモデルの変革
3.業務、組織、企業文化・風土の変革
4.競争の優位性

従来のIT化との違いで強調されているのは、特に2,3の製品やサービス、
ビジネスモデルそのもの、さらには企業文化・風土をも変革する事を謳っている点です。

手前味噌ですが、「面積原価管理」は、社員全体に「生産性」について正しく認識し、
一人一人が改善の意識を持ち自薦する意味で、
企業文化・風土の変革を担う事のできるDX手法であると考えています。

 

さて、これからそれぞれのDXレポートの内容を概観していきましょう。

・2018年度版DXレポート

<アジェンダ>

  1. 検討の背景と議論のスコープ
  2. DXの推進に関する現状と課題
  3. 対応策の検討
  4. 今後の検討の方向性

 

「1.検討の背景と議論のスコープ」では、現状日本のITにまつわる問題認識が示されています。

  • グローバルにITかに進展で日本が取り残され競争力が失われつつある
  • AIなど先端技術の取り組みが始まっているものの
    POCに留まっておりビジネス変革には繋がっていない
  • 既存システムが老朽化・複雑化しており、
    新規技術の資源が活用されていない

このような認識から、2018年度版DXレポートでは、
「DXを実現していく上でのITシステムに関する
現状の課題やその対応策を中心に議論」されています。

 

「2.DXの推進に関する現状と課題」では、既存ITシステム、つまりレガシーシステムの問題、
「ブラックボックス化」の問題点を詳細に分析しています。

この中で興味深いのが、IT人材の人員配置の日米比較です。

 

 

アメリカでは、IT人材がユーザー企業に2/3、IT企業に1/3であるのに対して、
日本は逆にユーザー企業に1/3、IT企業に2/3の配置と逆転しています。

そのため日本では、ユーザー企業のIT化を進める人材が不足し、
DX化を遅らせる大きな要因であるとしています。

これは、IT企業の問題でもあります。

DXが進展すると、従来の日本の請負型受注が減少しIT事業者の構造転換が求められるとし、
アジャイル開発の必要性に言及しています。

 

「3.対応策の検討」では、このような状況を打破するための
「DX推進システムガイドライン」の策定が示されています。

さらに、ユーザー企業が自身のITシステムの全体像を把握するための
「見える化指標」「診断スキーム」を構築することが示されています。

 

当レポートの最後に「4.今後の検討の方向性」として、
今後の対応策と9月以降の進め方について示されています。

 

 

・2020年度版DXレポート2

<アジェンダ>

  1. 検討 の背景と議論のスコープ
  2. DXの現状認識とコロナ禍によって表出した DX の本質
  3. 企業の経営・戦略の変革の方向性
  4. 政府の政策の方向性
  5. 今後の検討の方向性

2018年度版DXレポートの主な論点であった
「既存システムの老朽化・複雑化・ブラックボックス化が
DXの本格導入の障壁となることへの警鐘」が、
逆に「DX=レガシーシステム刷新」との誤ったメッセージを与えたとして、
むしろDXそのものの導入へと論点の変化が見られます。

 

また、DX推進指標のアンケート結果からは、
95%の企業はDXに全く取り組んでいないか、
取り組みを始めた段階であり、
先行企業と平均的企業でのDX進捗状況は大きな差があることが報告されました。

 

また、同時に企業のDXへの危機感の低さも示されています。
DX先行企業と平均企業とのコロナ禍における経営状況の差に明らかな違いが見られるなど、
DXを進める経営トップのコミットメントに有無が大きな変革に速やかに対応できたかの差であるとしています。

 

このような現実を踏まえて、正にDXを推進する必要性が高まっているとしています。

上記の現状認識に立って、企業の経営・戦略の変革の方向性として
1.DX加速シナリオ
2.コロナ禍を契機に企業が直ちに取り組むべきアクション
3.DX推進に向けた短期的対応
4.DX推進に向けた中長期的対応
を提言しています。

 

その上で、民間のDXをサポートする政府の政策の方向性として、以下が示されました。
1.共通理解の形成のためのポイント集の策定
2.CIO/CDXOの役割再定義
3.DX成功パターンの策定
4.デジタルプラットフォームの形成
5.ユーザー企業とベンダー企業の競争の推進
6.DX人材の確保

 

最後に以下の、「今後のDX検討会の方向性」が示されています。

 

 

・2021年度版DXレポート2.1

<アジェンダ>

  1. 検討の背景と議論のスコープ
  2. ユーザー企業とベンダー企業の現状と変革に向けたジレンマ
  3. デジタル産業の姿と企業変革の方向性
  4. 変革に向けた施策の方向性
  5. 施策の検討状況

2020年度版DXレポートでは、
「レガシー企業文化からの脱却、ユーザー企業とベンダー企業の共創の推進の必要性」が示されました。
さらに、ユーザー企業とベンダー企業のDX時代における新しいあり方についても提言が行われました。

一方で、「デジタル産業」と表現したデジタル変革後の新たな産業の姿や
その中での企業の姿がどういったものであるかという点までは
議論を進められていなかったという反省が述べられています。

以上の反省に立って、DXレポート2.1では、デジタル変革後の産業の姿、
その中での企業の姿、そして企業の変革を加速させるための課題や政策の方向性が議論されています。

 

「ユーザー企業とベンダー企業の現状と変革に向けたジレンマ」として、
双方の相互依存関係に言及されています。

 

つまり、ユーザー企業は委託による「コストの削減」、
ベンダー企業は受託による「低リスク・長期安定ビジネスの享受」という相互依存関係が、
デジタル競争を勝ち抜いていく事が困難な「低位安定」をもたらしていると述べています。

このような議論を踏まえて、「デジタル産業の構造と企業類型」として以下を示しています。

 

 

今後、政府では以下の政策の方向性を実現するための取り組みを推進していくとしています。
・デジタル産業指標の策定
・DX成功パターンの策定

以上が、今後政府が推進していくとするDX政策の概要です。

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